ふるえ(本態性振戦)抑制ロボット

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ロボットの概要

 本態性振戦という不随意のふるえを有する患者を対象として,装着することによってふるえを軽減する装着型ロボットの開発を行っている(ロボット単体の写真:Fig. 1、ロボットを装着した様子:Fig. 2).本ロボットは肘関節部分に配したギヤードモータと上腕・前腕のフレームで構成されている.ギヤードモータの運動は前腕フレームの付け根にある回転軸に伝達されており,装着すると肘の回転中心とフレームの回転軸が一致するように設計されている.

 Fig. 3にロボットによる支援のコンセプト図を示す.このロボットは装着することでモータの力によって関節を拘束し,ふるえを抑制する(コンセプト①).関節を拘束する点に関しては装具(あるいはギブス)と同様であるため,ふるえが抑制できているものの,随意的な運動を制限された状態である.そこで,本ロボットでは表面筋電位(以下,筋電位と称する)を用いて筋肉を随意的に動かそうとする意図を推定し,その意図に応じて前腕フレームに連結したモータを駆動する(コンセプト②).以上の,「抑制」と「随意意図への追従」の二段階のコンセプトを踏まえることで,「ふるえを抑制しながらも,意図通りに動作が可能なロボット」を開発している.

Fig.1 本態性振戦抑制ロボット
Fig.2 ロボットを装着した様子
Fig.3 ロボット機能のコンセプト

ロボットの背景

本態性振戦

 振戦は体の一部が不随意に振動する疾患であり,不随意運動の中でも最も一般的な症状である.その中でも,動作をする際や,一定の姿勢を維持する際に振戦を生じる疾患として本態性振戦という疾患がある.現在,日本では約600 万人の方が本態性振戦の症状を有するとされており,そのうちの65%が,ふるえの症状によって食事動作や筆記動作といった日常動作に難を抱えている.そのため,本態性振戦を抑制する手法が必要となる.

本態性振戦の抑制手法

 現在,用いられている本態性振戦の抑制手法としては,βブロッカーという薬を服用する手法と脳深部刺激療法(DBS)という脳に電極を埋め込む手法がある.しかし,これらは薬を継続使用することによる抑制効果の減衰や,電極を頭に埋め込むことの侵襲性が問題視されている.また,最近ではふるえの原因となっている筋肉に対して機能的電気刺激を行うことによってふるえを抑制することを試みる研究も報告されている.しかし,機能的電気刺激は刺激を行う際に強い刺激感や痛みを伴うことが問題である.

 そこで、著者らは患者への負担が小さい振戦抑制手法として,装着することで振戦を抑制する装着型ロボットの開発を進めている

ロボットの研究目的・目標

 本研究の目的は、本態性振戦患者の食事動作を支援するために装着することで負担を少なくふるえを抑制する装着型ロボットを開発することである。これまでに、概要で述べた2つのコンセプト

  • ふるえの抑制
  • 表面筋電位からの随意意図の推定

に関する検討を進めてきている。

研究事例

 本ロボットの仕様をTable 1にまとめる。本ロボットは日常生活の中で使用するロボットであるため、ふるえを抑制できるだけでなく、小型軽量である必要がある。そこで、我々は、以下のような検討を行い、ふるえの抑制と小型軽量な仕様を実現している。

①1対象動作の決定(4.1.1項)
様々な動作において使用可能なロボットが開発できることはロボットの使用者にとって非常に良いことであるが、同時に開発の要求仕様が定まらず、実用に結びつかないケースも多い。そこで、患者の日常動作の中で重要でありながらも、振戦の影響で動作の遂行が困難となっている動作を対象動作として選定する。
②対象動作に必要最低限な支援方策(4.1.2項)
4.1.1項で決定した対象動作を実現するために、最低限必要となる支援方策を対象動作の動作解析を通して検討する。
③ふるえを最低限抑制するために必要なモータトルクの導出(4.1.3項)
本ロボットは重たいものを持ち上げる時のアシストといった、パワーアシストを目的としておらず、あくまでふるえが抑えられれば、後は動作追従が為されれば良い。そこで、患者のふるえにより、ロボットに加わるトルクを実験で測定し、そのトルク以上のモータを選定することで、ふるえを抑制する上で必要最低限の支援を実現する。
Table 1 Weight of the proposed robot
Fujielab-matsumoto-101.jpg

対象動作の決定

 コンセプトによりふるえを抑制しつつ随意動作を実現するためには,対象とする自由度ごとにアクチュエータを配することが必要である.しかし,上肢のあらゆる自由度にアクチュエータを配すると,装置が大型化し,装着者が日常で使用する上で多くの問題を生じてしまう.そこで,本研究ではロボットによって支援する動作を絞り,その動作を実現する上で,確実にふるえを抑制しつつ随意動作を遂行可能とすることが必要となる自由度のみにアクチュエータを配し,その他の自由度に関しては,症状の有無に応じて完全に拘束する場合と,拘束しない場合を分けることとした.

 Louisらは本態性振戦患者を対象として,日常における困難な動作をスコアリングする研究を行なっている(23).その研究によれば,飲み物を飲む動作など食事における動作は困難な動作として高いスコアとなっており,ふるえを生じている状況下で食事を行うことの難しさが報告されている.食事動作は「衣食住」と言われるように日常の中で欠かすことのできない動作の一つであり,食事動作を支援することは患者のQOLの向上につながることが考えられる.そこで,本研究では対象動作を食事動作に絞ることとした.

各関節自由度に対する支援方策

 次に食事動作を支援する上で最低限ふるえの抑制と随意動作の遂行を支援しなければならない自由度を決定する.食事動作には,上肢の7自由度全てが関係しており,いずれの自由度に支障を来しても食事において何らかの障害が発生する(22).そこで,食事中の各自由度の可動範囲を測定した資料と人間の代償動作を基に食事支援に必要な自由度を選択する(24), (25).なお,肩には顕著なふるえが現れないという報告(26)があるため,肩の自由度は拘束を行わないこととし本項でも検討は行わない.

(1) 手首
手首関節においては掌屈・背屈と橈屈・尺屈の2自由度がある.まず掌屈・背屈の自由度は関節可動域が100 [deg]程度であるのに対して,食事動作時においては20 [deg]程度しか使用されていない.また,橈屈・尺屈の自由度は関節可動域が70 [deg]程度であるのに対して,食事動作時には30 [deg]程度しか使用していない.さらに手首の自由度が平面的な動作に対応した自由度であり空間的動作への寄与が小さい事を考慮すると,食事動作においては,手首の自由度は支援の優先順位が低いと考えられる.そこで本研究では手首の関節を支援対象からはずし,必要に応じて完全拘束することとする.
(2) 前腕
前腕の回内・回外の自由度は関節可動域が180 [deg]程度であるのに対して,前腕を積極的に使用する被験者の場合は160 [deg]程度用いていたが,ほとんどの被験者において50 [deg]程度であった.このことから,前腕の自由度において完全拘束により振戦抑制を行うことは,被験者によっては食事動作を制限させてしまう可能性がある.
(3) 肘
肘の屈曲・伸展の自由度は関節可動域が145 [deg]程度であるのに対して,食事動作においては70[deg]程度が使用されており,可動域の半分程度しか用いられていないことがわかった.しかし,肘の屈曲・伸展動作は,人が物を掴み体に近づける上で不可欠な自由度であり,事実上肘を完全に拘束すると食事動作は不可能である.

 以上の考察より肘の屈曲・伸展動作,および,前腕の回内・回外動作に絞った.さらにここで両者の食事における役割を考慮に含める.前腕の回内・回外動作は,食べ物を箸でつかむ時や食べ物を口に運んだ時にその動作を行いやすいように手の姿勢を調節する役割をもつ.よって,前腕を拘束すると食事の行いにくくなる可能性は否めないものの,食事そのものが行えなくなるということはない.一方,肘の屈曲・伸展動作は前述の通り,対象物と自分の距離を調節する役割がある.したがって,肘を拘束すると対象物を口元に運ぶ手段は失われ,食事自体が行えなくなってしまう.以上の比較より,肘の動作がより食事に不可欠な自由度であると思われるため,本研究ではまず肘関節を支援対象とする.

 まとめると,我々の提案するふるえを抑制する外骨格ロボットは,以下のように患者を支援していることとなる.

・手首:ふるえの症状に応じて完全拘束する場合としない場合を使い分け
・前腕:ふるえの症状に応じて完全拘束する場合としない場合を使い分け
・肘:アクチュエータにより,ふるえの抑制と随意動作の遂行を支援
・肩:拘束なし

開発された外骨格ロボットの仕様をTable 1にまとめる.アクチュエータにて支援する自由度を絞ったこと、また施設で述べる実験により必要最低限の出力を有するアクチュエータを選定したことにより、軽量な仕様を実現することができている。

ふるえを抑制するために最低限必要なモータトルクの導出

 本ロボットが,CYBERDYNE株式会社のHAL®に代表されるパワーアシストロボットと大きく異なる点は,装着者の筋力補助を目的としていない点である.そのため,筋力を補助するための出力の大きいアクチュエータは必要なく,最低限振戦を外部から抑え込めるトルクを有しているモータで十分である.そこで、振戦を抑え込むために必要となる保持トルクを導出する実験を行った.ロボットと同様に肘装着型のトルク計測装置(Fig. 4)を用い,本態性振戦患者の方が最もふるえ易い姿勢(Fig. 5)にて,振戦によってロボットにかかるトルクを計測した.その結果,Fig. 6のように振戦によるトルクは凡そ±0.5[Nm]以内に収まっていることが確認された.より症状が重い患者がいることも想定し,安全率を2と設定して,ロボットに搭載するモータの保持トルクの要求仕様を1[Nm]以上とした.この結果と予備実験で導出した無負荷回転速度の要求仕様80[deg/s]を踏まえ,保持トルク1.3[Nm],無負荷回転数84[deg/s]の性能を持つ既製品をロボットに採用した(Table 2).なお、本実験は早稲田大学の「人を対象とする研究に関する倫理委員会」の承認の下,実施された.

Fig. 4 ふるえトルク計測装置
Fig. 5 ふるえトルク計測姿勢
Fig. 6 ふるえトルク計測結果の一例
Table 2 Specification of selected motor compared with requirement specification
Fujielab-matsumoto-102.jpg

振戦抑制ロボットによるふるえの抑制効果の検証

 4.1節で述べた仕様のロボットを用いることによるふるえの抑制効果を検証する。本実験では、本態性振戦患者がロボットを装着した状態としていない状態において、肘の屈曲伸展動作を行っていただき、その際の手先に現れるふるえの大きさを3軸加速度センサ(Biometrick Ltd製、ACL300)にて計測した。患者は特に液体の入った器を運ぶといった様な、巧緻な(精密な)動作においてふるえが激しくなる傾向があるため、本実験では、Fig. 7のようなピンポン玉が入った透明な箱を把持し、ピンポン球を側壁に接触させないように制御しながら、肘の屈曲伸展動作を行うように指示した。ロボットを装着していない状態とロボットを装着した状態の実験風景をFig. 8(a)、Fig. 8(b)にそれぞれ示す。なお、本ロボットは筋電位に基づき制御されるロボットであるため、本実験も患者の筋電位の情報を下に行うべきであるが、推定精度や動作遅延の影響を排除するため、本実験においてはFig. 8(b)のように非利き手に把持したトグルスイッチによってロボットの動作を決定している。    Fig. 9に実験時における手先の加速度のふるえの周波数帯(4~6[Hz])成分の波形の一例を示す。ロボットを装着することによって、加速度の振幅が大きく減少していることがわかる。肘関節が屈曲位にて静止している状態(Fig. 9中の赤丸部)ではふるえが約50%軽減し、伸展位にて静止している状態(Fig. 9中の緑丸部)ではふるえが約80%軽減できていることが確認された。

Fig. 7 把持対象物
ファイル:Fujielab-matsumoto-008.png
(a) ロボット装着なし
Fig. 8 実験風景
(a) ロボット装着なし
(b) ロボット装着
Fig. 9 対象動作時における患者の手先の加速度(ふるえの大きさ)の比較

本態性振戦患者の表面筋電位から随意動作を推定するアルゴリズム

本態性振戦患者の筋電位

 Fig. 10 (a)に健常者の筋電位,Fig. 10 (b)に本態性振戦患者の筋電位を示す.これらの筋電位はいずれも,飲み物を飲む動作を模擬するタスクにて肘の屈曲動作を行っていただいた際の上腕二頭筋の筋電位を示している.本態性振戦患者の筋電位で特徴的な部分は,Fig. 10 (b)の赤い点線の四角で囲った部分のような周期的に振幅が増減を繰り返す筋電位である.この周期的な筋電位は群化放電と呼ばれ,筋電位が周期的に発火することによって,筋肉が収縮と弛緩を繰り返し,その結果として振戦を引き起こす原因となっている.振戦の病態機序には以下の3つがある(8).

1) 重力および心臓の鼓動の機械的な振動と四肢の弾性による機械的な機序によるもの
2) 末梢からの感覚入力におる反射性機序によるもの
3) 中枢神経内に振戦のリズムを形成する機序が存在し,それを起源とするもの

本態性振戦の病態機序は3)の中枢神経内に振戦のリズムを形成する機序が存在するものと考えられていることから,本態性振戦の筋電位は,運動野からの指令が筋肉に至るまでの過程のどこかで振戦のノイズが混入し,波形形状が変形されていると考えられる.しかし,「本態性」という言葉が「原因不明」ということを示しているように,振戦のノイズがどの過程で混入するかに関しては依然として医学分野の研究段階である.このように周期的に振幅が増減を繰り返す筋電位の情報を基にロボットを駆動すると,振幅の増減に応じて,ロボットの動作も振動してしまうこととなる.そのため,正確に装着者の意図通りに外骨格ロボットを制御するためには,筋活動を推定する前に,振戦のノイズが混入する前の波形を復元するような信号処理を施すことが必要となる. 信号にノイズが混入する際には,2種類の形態がある.式(1)のようにノイズが信号に対して加算的に混入する加算性ノイズと,式(2)のようにノイズが信号に対して乗算的に混入する乗算性ノイズである.

$y(t)=x(t)+N(t)$      (1)
$y(t)=x(t)*N(t)$      (2)

ここで,$y(t)$,$x(t)$,$N(t)$はそれぞれ時刻tにおける出力波形(ノイズ混入後の波形),入力波形(元の信号),混入しているノイズを示す.加算性のノイズの波形形状をFig. 11(a)に,乗算性ノイズの波形形状をFig. 11(b)に示す.両グラフの特徴の違いから分かるように,本態性振戦患者の筋電位に含まれる振戦のノイズは元の動作指令に対し乗算的に混入している特徴がある.式(2)を本態性振戦患者の筋電位に合わせる形で書き換えると,筋電位に元から含まれている高周波のノイズも含め

$EMG(t)=(V(t)+N_H (t))*N_T (t)$      (3)

と書き表される.ここで,$EMG(t)$,$V(t)$,$NH(t)$,$NT(t)$はそれぞれ時刻tにおける計測されている筋電位,随意信号,高周波のノイズ,振戦のノイズを表す.

(a) 健常者の筋電位
(b) 本態性振戦患者の筋電位
Fig. 10 健常者と本態性振戦患者の筋電位の特徴の比較

乗算性ノイズの除去

 前項で述べた通り,本態性振戦患者の筋電位には振戦のノイズが乗算性ノイズとして混入している.ロボットを正確に患者の随意信号に応じて制御するためには,リアルタイムで乗算性ノイズを除去し,随意信号を復元することが必要である.

 ノイズを取り除く手法としてはローパスフィルタやバンドストップフィルタのような帯域制限フィルタが一般的に用いられている.筋電義手を制御することなどを目的として, 筋電位から動作推定する場合にも,事前にこれらのフィルタリングを用いて,ノイズを除去することが行われており,筋電位に対する処理としても非常に一般的な手法である.しかし,ここでローパスフィルタやバンドパスフィルタはFig. 12のように,乗算性ノイズの除去はできず,加算性のノイズしか除くことができないという課題がある.そのため,本態性振戦患者の筋電位をローパスフィルタにより処理しても,振戦のノイズは除くことができない.

 乗算性のノイズを取り除く手法としてはケプストラム分析という手法がある.ケプストラム(cepstrum)とは,スペクトラム(spectrum)のアナグラムによる導出語であり,波形をフーリエ変換して得られたパワースペクトルの対数をとり,さらに逆フーリエ変換をかけた結果のことを指す.しかし,ケプストラム分析にも時系列データを処理することができないという課題があり,本態性振戦患者の筋電位をリアルタイムに処理してロボットを制御しようと試みる場合には適用できないという問題がある.

 そのため,本態性振戦患者の筋電位の情報に基づき,外骨格ロボットを制御するためには,リアルタイムで乗算性ノイズを取り除く手法を開発することが必要となる.

(a) 加算性ノイズ ($sin2πf_{1}t + sin2πf_{2}t$)
(b) 乗算性ノイズ ($sin2πf_{1}t * sin2πf_{2}t$)
Fig. 11 加算性ノイズと乗算性ノイズの特徴の違い ($f_1 = 5[Hz], f_2 = 50$[Hz])
(a) 加算性ノイズ ($sin2πf_{1}t + sin2πf_{2}t$) 緑の波形:元の信号、赤の波形:ローパスフィルタをかけた信号
(b) 乗算性ノイズ ($sin2πf_{1}t * sin2πf_{2}t$) 緑の波形:元の信号、赤の波形:ローパスフィルタをかけた信号
Fig. 12 二種類のノイズに対するローパスフィルタの効果 ($f_1 = 5[Hz], f_2 = 50$[Hz])

アルゴリズムの概要

 Fig. 13に提案するアルゴリズムのフローを示す。振戦のノイズを含んだ筋電位をそのまま識別器(ニューラルネットワーク)に入力すると、ロボットの動作も振動的になってしまうため、識別器に入力する前に、ふるえの信号を取り除くフィルタが必要となる。

Fig. 13 本態性振戦患者の随意動作意図推定アルゴリズム

 このフィルタではまず,不随意信号がある基準波形に近似できる仮定する.そして,ある時点で取得した筋電位のうち直近の信号波形と不随意信号の基準波形を比較し,両者の相関の高さに応じて振幅を減衰するというフィルタである.先行研究では,この基準波形を不随意信号と波形形状が類似しているサイン累乗波の一周期としている.処理は下記の1) ~ 3)の流れで行う.

1) ふるえの周波数$f$ [Hz]を事前に規定し現在から過去$\frac{1}{f}$ [s]分の筋電位$e_n$を取り出す.
2) 切り出した筋電位と次数kを事前に規定したサイン累乗波との相互相関係数を計算し,相関係数が最大値$C_{MAX}$を取るサイン累乗波の位相$θ_E$を求める.(Fig. 14)
3) 相関係数の最大値$C_{MAX}$に応じて減衰率Aを決定し,式(4),式(5),式(6)を用いて,入力信号enを減衰させた信号$s_n$を出力する.
$s_n=(1-A)*{e_n}$      (4)
$A=f(C_{MAX} )*sin^k θ_E$      (5)
$f(C_{MAX})=\frac{1}{(1+exp(-a(C_{MAX}-offset))}$      (6)

 ここで,式(6)はシグモイド関数を示しており,相関係数の最大値$C_{MAX}$がoffsetより大きい場合は$f(C_{MAX})$が$1$,offsetより小さい場合は$f(C_{MAX})$が$0$となる.つまり,offsetより相関係数の最大値$C_{MAX}$が大きくなる場合のみ,減衰率Aが$0$以上となり,減衰が行われることとなる.

Fig. 14 筋電位と基準波(サイン累乗波)の相関
Fig. 15 振戦ノイズ除去フィルタの効果

 Fig. 15にこの手法によって波形を減衰したグラフを示す.この手法によって,周期的に増減を繰り返す波形のみを選択的に減衰可能であることが確認された.また,振幅の不随意な増減が解消されることにより,処理した筋電位を時間遅れニューラルネットワークに入力することによって,患者が動作をしている状態と姿勢を維持している状態をON/OFFにて区別可能となった.

参考文献

卒業論文

2011年度
  • 雨宮元之:肘装着型ロボットを用い食事動作をする際の代償運動を軽減する肘・前腕連動機構の開発
2010年度
  • 松本侑也:筋電信号の特徴解析に基づく本態性振戦患者の随意動作識別法の開発
2009年度
  • 西本圭吾:筋電信号を用いた時系列対応NNによる本態性振戦患者の随意動作識別法の開発
2006年度
  • 渡邉正樹:振戦抑制を目的とした手首・肘外骨格型ロボットの開発~振戦した腕における随意運動抽出のためのEMGの検証~

修士論文

2012年度
  • 松本侑也:本態性振戦患者の表面筋電位を用いた随意動作識別アルゴリズムにおける振戦の特徴変化に応じたパラメータチューニング
  • 陳瑋煒:ふるえを抑えるためのロボット装具を開発するための手部弾性率計測に基いた拘束部位の検討
2008年度
  • 渡邉正樹:本態性振戦患者の食事動作を支援する表面筋電位を用いた

博士論文

国内学会

2010年
  • 西本 圭吾, 関 雅俊, 安藤 健, 藤江 正克,”筋電信号を用いた時系列対応NNによる本態性振戦患者の随意動作識別法の開発”,pp.463-464.

国際学会

2012年
  • Yuya MATSUMOTO, Masatoshi SEKI, Takeshi ANDO, Yo KOBAYASHI, Hiroshi IIJIMA, Masanori NAGAOKA, Masakatsu G. FUJIE, “Analysis of EMG signals of Patients with Essential Tremor Focusing on the Change of Tremor Frequency”, The 34th Annual International Conference of IEEE Engineering in Medicine and Biology Society, August 28 – September 2, 2012, pp. 2244-2250.査読有
  • Yuya MATSUMOTO, Masatoshi SEKI, Takeshi ANDO, Yo KOBAYSHI, Hiroshi IIJIMA, Masanori NAGAOKA, Masakatsu G. FUJIE, “Tremor Frequency Based Filter to Extract Voluntary Movement of Patients with Essential Trmeor”, IEEE RAS & EMBS International Conference on Biomedical Robotics and Biomechatronics, 24-27 June, 2012, pp. 1415-1420.査読有
2011年
  • Masatoshi SEKI, Yuya MATSUMOTO, Takeshi ANDO, Yo KOBAYSHI, Hiroshi IIJIMA, Masanori NAGAOKA, Masakatsu G. FUJIE, “The Weight Load Inconsistency Effect on Voluntary Movement Recognition of Essential Tremor Patient”, Proceedings of 2011 IEEE International Conference on Robotics and Biomimetics, pp. 901-907, 2011.査読有
  • Masatoshi SEKI, Yuya MATSUMOTO, Takeshi ANDO, Yo KOBAYSHI, Hiroshi IIJIMA, Masanori NAGAOKA, Masakatsu G. FUJIE, “Development of Robotics Upper Limb Orthosis with Tremor Suppression and Elbow Joint Mobility”, The 2011 IEEE International Conference on Systems, Man, Cybernetics, pp.729-735, 2011.査読有
  • Masatoshi SEKI, Yuya MATSUMOTO, Takeshi ANDO, Yo KOBAYSHI, Hiroshi IIJIMA, Masanori NAGAOKA, Masakatsu G. FUJIE, “Filtering Essential Tremor Noise on surface EMG based on Squared Sine Wave Approximation”, The 33th Annual International Conference of IEEE Engineering in Medicine and Biology Society, pp.7487-7491, 2011.査読有
2010年
  • Takeshi ANDO, Masaki Watanabe, Masatoshi SEKI, Masakatsu G. FUJIE, “Myoelectric Controlled Exoskeletal Robot to Suppress Essential Tremor: Extraction of Elbow Flexion Movement using STFTs”, International Conference on Advanced Mechatronics, pp. 756-761, 2010.査読有
2009年
  • Takeshi ANDO, Masaki Watanabe, Masakatsu G. FUJIE, “Extraction of Voluntary Movement for an EMG Controlled Exoskeltal Robot of Tremor Patient” 4th International IEEE EMBS Conference on Neural Engineering, pp. 120-124, 2009.査読有

国内講演会

2013年
  • 松本侑也,陳瑋煒,雨宮元之,金石大佑,中島康貴,關雅俊,安藤健,小林洋,飯島浩,長岡正範,藤江正克,“ふるえ抑制ロボットにおける効果的にふるえを抑制可能なフレーム形状の工学的検討”,第14回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会,3F1-2,2013.
  • 松本侑也, 陳瑋煒, 雨宮元之, 金石大佑, 中島康貴, 關雅俊, 安藤健, 小林洋, 飯島浩, 長岡正範, 藤江正克, “ふるえを抑制する装着型ロボットのフレーム形状の工学的検討", LIFE2013 生活生命支援医療福祉工学系学会連合大会, GS3-1-1, 2013.
  • 金石大佑, 松本侑也, 雨宮元之, 中島康貴, 關雅俊, 安藤健, 小林洋, 飯島浩 長岡正範, 藤江正克, "加速度と姿勢情報を用いた本態性振戦患者の患部特定手法の構築", LIFE2013 生活生命支援医療福祉工学系学会連合大会, GS3-4-7, 2013.
  • 雨宮 元之,金石 大佑,松本 侑也,中島 康貴,関 雅俊,小林 洋,飯島 浩,長岡 正範,藤江 正克,“装着型ロボット使用時の代償運動を低減する肘・前腕連動機構の開発 -食器位置と代償運動低減効果の関係検証-”,日本ロボット学会第31回学術講演会,3C3-2,首都大学東京南大沢キャンパス,東京,9月4-6日,2013年.
  • 松本 侑也, 關 雅俊, 安藤 健, 小林 洋, 中島 康貴, 飯島 浩, 長岡 正範, 藤江 正克, "本態性振戦患者の食事動作を支援する肘装着型ロボットの装着による振戦抑制効果の検証",日本機械学会 ロボティクス・メカトロニクス講演会2013, 1P1-E02, 2013.
  • 松本侑也, 關雅俊, 安藤健, 小林洋, 中島康貴, 飯島浩, 長岡正範, 藤江正克, 本態性振戦患者の表面筋電位を用いた随意動作識別アルゴリズムにおける振戦の特徴変化に応じたパラメータチューニング, 第22回ライフサポート学会フロンティア講演会, A6-4, 慶應義塾大学芝共立キャンパス, 東京, 3月2日, 2013年.
2012年
  • 松本 侑也,関 雅俊,安藤 健,小林 洋,飯島 浩,長岡 正範,藤江 正克,本態性振戦患者のふるえのトルク解析に基づく食事動作を支援する肘装着型ロボット装具の設計,生活生命支援工学系学会連合大会(LIFE2012),GS1-4-8,名古屋大学,名古屋,11月2-4日,2012年.
  • 松本侑也,関雅俊,安藤健,小林洋,飯島浩,長岡正範,藤江正克,ふるえを起こす筋電信号の特徴を考慮した本態性振戦患者の随意動作識別法の開発,日本機械学会2012年度年次大会,J241026,金沢大学角間キャンパス,金沢,9月9-12日,2012年.
2011年
  • 関 雅俊,松本 侑也,藤江 正克,"振戦抑制ロボット肘装具のための食事動作評価手法の検討",第29回日本ロボット学会学術講演会予稿集,2H1-3,2011.
  • 松本 侑也,関 雅俊,安藤 健,飯島 浩,長岡 正範,藤江 正克,"筋電信号の特徴解析に基づく本態性振戦患者の随意動作識別法の開発", 日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会'11 講演論文集, 2P2-D01, 2011.
  • 安藤 健, 渡邊 正樹, 藤江 正克, 本態性振戦抑制ロボットのおける随意動作抽出アルゴリズムの開発, 生活支援工学系学会連合大会講演予稿集, 1D3-2.
2008年
  • 渡邉正樹, 藤江正克,”本態性振戦患者の随意動作を可能とする装着型ロボットの開発”,第6回生活支援工学系学会連合大会,75,2008.

原著論文

2013年
  • Yuya MATSUMOTO, Masatoshi SEKI, Takeshi ANDO, Yo KOBAYASHI, Yasutaka NAKASHIMA, Hiroshi IIJIMA, Masanori NAGAOKA, Masakatsu G. FUJIE, “Development of an Exoskeleton to Support Eating Movement in Patients with Essential Tremor”, Journal of Robotics and Mechatronics, Vol. 25, No.6, 2013.(掲載決定)
2012年
  • Takeshi ANDO, Masaki WATANABE, Keigo NISHIMOTO, Yuya MATSUMOTO, Masatoshi SEKI, Masakatsu G. FUJIE, “Myoelectric Controlled Exoskeletal Elbow Robot to Suppress Essential Tremor: Extraction of Elbow Flexion Movement Using STFTs and TDNN”, Journal of Robotics and Mechatronics, Vol. 24, No. 1, 141-149, 2012.

実用化プロジェクト

  • ふくしま医療福祉機器開発事業補助金,“社会復帰を促す自立支援スパイラル装具”,代表:株式会社菊池製作所,2012年4月~2015年3月.(予定)
  • 福祉用具・介護ロボット実用化支援事業における介護機器などモニター調査事業,“スパイラルフレーム型ふるえ(本態性振戦)軽減サポーターのオコナー巧緻テストによる実証試験及び書字動作支援のための金属フレームを用いた装具デザインの検討”,代表:株式会社菊池製作所,2011年度~2012年度.
  • 関東経済産業局 地域イノベーション創出研究開発事業,“高齢者のふるえ(本態性振戦)を抑える肘装着型ロボット装具開発”,代表:タマティーエルオー株式会社,平成22年度~平成23年度.

メディア露出

テレビ、新聞、Webページ

2013年
  • 振戦抑制ロボット(菊池製作所),テレビ東京『アド街ック天国』菊池製作所紹介内で登場.
  • 振戦抑制ロボット(早稲田大学),EPTA 特集:ロボットと暮らす,2013年9月,pp. 47-52.
  • 振戦抑制ロボット(早稲田大学),早稲田大学の現在研究開発中のロボットたちを6種7体まとめて一挙紹介,2013年8月2日.
  • 振戦抑制ロボット(菊池製作所),日本経済新聞,『菊池製作所,早大と筆記補助具開発』,2013年5月31日.
2012年
  • 振戦抑制ロボット(菊池製作所),日経BP,【国際福祉機器展】菊池製作所と早大,高齢者などの手の震えを抑える装着型ロボットを展示,2012年10月2日.
  • 振戦抑制ロボット(菊池製作所),iPROS,【国際福祉機器展】菊池製作所と早大,高齢者などの手の震えを抑える装着型ロボットを展示,2012年10月1日.
  • 振戦抑制ロボット(菊池製作所),Tech-On!,【国際福祉機器展】菊池製作所と早大,高齢者などの手の震えを抑える装着型ロボットを展示,2012年10月1日.
  • 振戦抑制ロボット,産業構造審議会新産業構造部会-報告書,経済社会ビジョン「成熟」と「多様性」を力に~価格競争から価値創造経済へ~,2012年7月9日,p. 37.
2011年
  • 振戦抑制ロボット(早稲田大学),日刊工業新聞,2011年10月5日.
2009年
  • 振戦抑制ロボット(早稲田大学),日刊工業新聞,2009年11月13日.

展示会

2013年
  • 振戦抑制ロボット(菊池製作所),国際福祉機器展(HCR 2013) 青梅商工会議所ブース内,2013年9月18日~20日.
  • 振戦抑制ロボット(菊池製作所),ヨコハマ・ヒューマン&テクノランド2013,2013年7月26日~27日.
2012年
  • 振戦抑制ロボット(菊池製作所),国際福祉機器展(HCR 2012) 青梅商工会議所ブース内,2012年9月26日~28日.
  • 振戦抑制ロボット(菊池製作所),ヨコハマ・ヒューマン&テクノランド2011,2012年7月27日~28日.
2011年
  • 振戦抑制ロボット(早稲田大学),2011 国際ロボット展 藤江研究室ブース内,2011年11月9日~12日.
  • 振戦抑制ロボット(菊池製作所),国際福祉機器展(HCR 2011) 青梅商工会議所ブース内,2011年10月5日~7日.
  • 振戦抑制ロボット(菊池製作所),ヨコハマ・ヒューマン&テクノランド2011,2011年7月22日~23日.